井蛙堂備忘録

医学的備忘録としてのブログ

COVID19関連ギラン・バレー症候群

Guillain-Barre syndrome Associated with SARS-CoV-2

Gianpoalo T, et al. April 17, 2020, NEJM
DOI: 10.1056/NEJMc2009191

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2009191

 

雑感

・COVID19でもギランバレー症候群(GBS)になるようです。

・5例のまとめと少ないですが、症状は重篤で軸索型が多い様子。抗ガングリオシド抗体が出ていませんが、検査項目が少なく、他の抗体は上がるかもしれません。

・入院時にCTで肺炎像がある症例も多く、GBSの呼吸不全かCOVID19の呼吸不全か難しいかもしれませんね。また、重篤な場合はICU関連weaknessなどの鑑別が重要となります。

・5例中1例はPCR陰性でしたが、血清IgGで評価しています。Snibe Diagnosticsの試薬(Maglumi 2019-nCoV IgM/IgG kit)を使用しているようです。

電気生理学的所見をみると、振幅は殆ど低下しているような。軸索メインでやられるのかもしれません。

・今後もう少しまとまった症例報告が出てくると予想されます。

 

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○概要と病歴

・5例のCOVID19関連ギラン・バレー症候群の症例。

・2020/2/28-3/21までに入院したイタリア北部の3つの病院。1000-1200人のCOVID19患者が入院していた。

・4例で鼻咽頭PCRが陽性となり、1例は鼻咽頭および喀痰は陰性であったが血清学的検査で陽性となった。

・初発症状は4例で下肢脱力と異常感覚、1例では失調に続く顔面の両麻痺と異常感覚であった。

・4例で36時間から4日間に四肢麻痺が進行し、3例で人工呼吸器を要した。

・COVID19の症状から5-10日でGBSの症状が出現していた。

・自律神経症状を認めた患者は居なかった。

 

○検査

・髄液検査では2例で正常蛋白、全患者で細胞数は5/μl未満であった。

・抗ガングリオシド抗体は検査した3例では検出されなかった。(検査された抗体は、GM1, GQ1b、GD1bの3種類のみ)

・髄液検査のPCRはすべて陰性であった。

電気生理検査では、CMAPの低下を認めていた。2例では運動神経の遠位潜時延長を認めた。針筋電図検査では当初3例で線維自発電位(fibrillation potential)を認めたが、最初は検出できなかった症例でも12日目の検査で確認できた。これらの結果からは、3例が軸索型と考えられ、2例が脱髄型と思われた。

・造影MRIでは馬尾神経の造影を2例で認めた。1例は顔面神経の造影効果を認め、2例では造影効果を全く認めなかった。

 

○治療と転帰

・すべての患者がIVIGを受けた。2例はIVIG2コース目に突入し、1人は血漿交換まで施行した。治療4週間後の段階で、2例はまだICUでの人工呼吸管理が必要であった。2例は麻痺が強く、リハビリテーションへと移行した。1人は歩行可能となり退院した。

 

○考察

・先行感染後5-10日でのGBS発症は他の感染症と類似している。多くの感染症がGBSと関連しているが、特にCampylobacter jejuni, EBV, CMV, ジカウイルスで多い傾向にある。コロナウイルス感染症とGBSの関連性を指摘する報告はいくつか存在する。

・5例の症例報告では、重度の症状や軸索型のGBSがCOVID19に関連する典型的症状かどうかはわからない。

・呼吸状態の悪化がGBSによる神経筋障害による肺活量の低下によるものかは断言できないが、胸部画像で呼吸不全に至るような重症な病変は認められない場合は考慮する必要がある。

・また、COVID19関連GBSはcritical illness neuropathy and myopathyと区別する必要がある。

 

 

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COVID19関連GBS 5症例まとめ

 

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COVID関連GBSの電気生理学的所見