井蛙堂備忘録

医学的備忘録としてのブログ

植込みデバイス(ペースメーカー、ICD、CRT、CRT-D)

ペースメーカー (artificial cardiac pacemaker)

・心臓に電気刺激を与えて収縮させる医療機器。

・洞不全症候群、房室ブロック、心房細動などの徐脈性不整脈に対して適応がある。

・植込み型の恒久的なものと、体外式の一時的なものがある。

・右心房、右心室心尖部などにリードを留置する。

 

NBGコード(NASPE/BPEG Generic pacemaker code、国際ペースメーカーコード)

・NASPE:North America Society of Pacing and Electrophysiology (アメリカの団体)

・BPEG:British Pacing and Electrophysiology Group (イギリスの団体)

・いわゆる「VVI」や「DDD」などのペースメーカーのモードを表す。

・文字列の意味:1文字目「ペーシングする部位」(V, A, D, O)

        2文字目「センシングする部位」(V, A, D, O)

        3文字目「作動モード」(T, I, D, O)

        4文字目「プログラミング機能」(R, C, M, P, O)

        5文字目「抗頻拍機能」(P, S, D, O)

・1文字目と2文字目:「V:心室(Ventricle)」、「A:心房(Atrium)」

          「D:心室+心房(Dual)」、「O:なし(None)」

・3文字目:「T:トリガーモード(Trigger)」、「I:抑制モード(Inhibit)」

       「D:トリガー+抑制モード(Dual)」、「O:固定レートモード」

・4文字目:「R:レートレスポンス機能」、「C:コミュニケーション機能」

       「M:マルチプログラミング機能」、「P:シンプルプログラミング機能」

       「O:プログラミング機能なし」

・5文字目:「P:抗頻拍ペーシング機能」、「S:ショック機能」

       「D:抗頻拍ペーシング+ショック機能」、「O:抗頻拍機能なし」

 

ICHDコード(Inter-Socity Comission for Heart Disease Resources code)

・3文字目まではNBGコードと同様。(ただし、1文字目に「O」はない)

・4文字目は「R:レートレスポンス機能」の表記のみで、5文字目はない。

・現在、デバイスの複雑化に伴い、NBGコードの方が一般的になっている。

 

各々の設定

・VVI:心室デマンド型ペーシング。心室の自発興奮があると抑制する。

・VVT:自発V波で直ぐに心室を刺激。

・VAT:自発A波で同期させて心室を刺激。

・VDD:心房同期心室抑制ペーシング。

    自発A波を感知して、心室を収縮させ、自発V波には抑制をかける。

・VOO:心室固定ペーシング。固定レートで心室を刺激。

・AAI:自発A波で心房刺激を抑制。

・AAT:自発A波で直ぐに心房を刺激。

・AOO:固定レートで心房刺激。

・DVI:心房心室を順次刺激。自発V波で心室刺激抑制。

・DAT:DADに同じ

・DAD:AAI+VAT。

・DDD:A-Vユニバーサルペーシング。AAI+VVI+VAT

・DDI:DVIで自発A波を抑制。

・DOO:固定レートで心房心室を順次刺激。

 

主流ペーシングモードと適応

・AAI:洞不全症候群で刺激伝導系が正常な人に適応がある。

・VVI:V波には抑制するが、A波は無視する設定。

     規則的な心房収縮があると房室逆流が起こりうる。

     徐脈が稀な人や、Afに合併した徐脈(房室ブロック)の人に適応がある。

・VDD:洞機能と房室伝導が正常なら、リード線1本で生理的ペーシングが可能。

    洞結節の機能が正常な房室ブロックの人に適応がある。

・DDD:最も生理的な収縮に近い、理想的なモード。

    殆どすべての除脈に対応できるが、リードが2本必要になる。

・DDI:房室伝導に異常が生じても生理的ペーシングを持続できる。

・VOO:手術時に行うペーシング。電気メスなどのノイズを拾わないため安全。

    自脈がある場合は、VVIペーシングの方が安全。

 

植込型除細動器(ICD, Implantable Caldioverter Defibrillator)

心室細動心室頻拍などの致死性不整脈に適応がある。

・致死性不整脈を感知して直流電流を流し、除細動を行う。

・頻拍がペーシングで抑制可能なら、抗頻拍ペーシングで抑制することもできる。

 

心臓再同期療法(CRT, Cardiac Resynchronaizarion Therapy)

心室の収縮が部位によって異なり、ポンプ機能が低下している場合に適応がある。

・完全左脚ブロックなどで、心臓同期障害が起こりうる。

・右室と左室から、など複数個所から刺激を行い、心筋の再同期を図る。

・両心室ペースメーカーを用いて心臓同期障害を治療する治療法である。

・通常のペースメーカーに左室を刺激するリードを追加することで可能となる。

 

CRT-D(CRT-Defibrillator、両室ペーシング機能付植込型除細動器)

・CRTに除細動機能を併せ持ったデバイス。

・ペースメーカー機能+CRT機能+除細動機能である。

心不全患者などで致死性不整脈を起こしうる場合に適応となる。